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火山とタケノコ

 

古事記の黄泉国の物語において、タケノコはとても重要なモチーフだとおもうのですが、従来の古事記研究において、タケノコはほとんど注目されていないようです。

 

『火山で読み解く古事記の謎』では、タケノコが火山的地質に適合した植物であるという事実から、黄泉国の謎に迫っています。

 

火山と古事記をめぐる旅によって見えてくるひとつが、タケノコです。

 

 日本列島の風土と深く結びつくタケノコの秘密を紹介します。

鬼界カルデラ硫黄島は、火山と竹の風景によって特徴づけられる。

 

イザナギを追撃する黄泉の鬼女、黄泉の軍団

 

火の神カグツチの出産が原因で死んでしまったイザナミは黄泉の国へ赴きました。

夫のイザナギは妻の死を受け入れることができず、黄泉の国へ追って行き、連れ戻そうとします。

 

イザナギの説得をうけ、イザナミは黄泉の国の神と相談するから、「そのあいだ、絶対にわたしの姿を見ないでください」と言ったにもかかわらず、イザナギはその約束を守ることができず、火を灯し、妻の現在の姿を見てしまいました。

 

イザナミは「恥をかかされた」と怒り、黄泉の国の鬼神や軍団が総がかりで、逃げるイザナギを追いかけて殺そうとします。

 

黄泉国の女の鬼神のようなヨモツシコメが遣わされますが、イザナギが逃げながら髪飾りを投げると、たちまち、山ブドウの実がなり、これを鬼女が食べているあいだに差を広げます。

 

それでも追いかけてくるので、今度は櫛の歯を折り取って投げ捨てると、たちまち、タケノコが生えてきて、鬼女が食べているうちに振り切りました。

 

 

八種類の雷神、黄泉の軍団が総動員され、イザナギは剣を抜き、後ろ手に振りながら逃げつづけます。今度は桃の実を投げると、雷神と黄泉の軍団は逃げてしまいました。

 

ブドウ、タケノコ、桃。

 

古事記の黄泉の国の物語に出てくる三つの食用植物。いずれも、火山性の土壌に適しているという共通点をもています。

 

 

 

なぜ、山梨県は日本一のブドウ、桃の産地なのか

 

『火山で読み解く古事記の謎』でも書きましたが、読売新聞社で記者をしていたころ、山梨県の甲府支局に2年ほどいたことがあります。20年以上まえのことです。

 

山梨は農業県という一面もあって、農業関係の取材もよくしていたのですが、当時も今も、ブドウ、桃の生産高は日本一です。

 

山梨県にあるふたつの活火山、富士山と八ヶ岳は、近現代においては大きな噴火を起こしていないので、活火山であるという印象が薄いかもしれません。

 

しかしもっと古い時代、二百万年くらいまえの甲府盆地は、激しく活動する火山群に取り囲まれており、現在、目にする盆地周辺の峨々たる山並を生みだしています。

 

このエリアは甲州ワインの産地として有名な勝沼町をはじめとして、山梨県でも果樹栽培の中心地となっています。火山性の土壌は保水の能力に乏しいため、水田にすると水が抜けてしまうという欠点があるのですが、果樹栽培にはうってつけなのです。

 

果樹王国・山梨の必然性は、その火山的な風土に求めることができます。

 

 

鬼界カルデラのタケノコ的な風景

 

すこし古いデータですが、竹についての県別ランキングの表があったので、紹介します。

 

九州でも、最も火山と温泉の多い鹿児島県、大分県が一位、二位です。

 

竹は南方の植物という印象がありますが、温暖な四国の県が入っていないのは、平均気温だけの問題ではないことがわかります。

鹿児島県最南端の沖合いで、縄文時代の七千三百年まえに生じた鬼界カルデラ噴火の現場である三島村。

硫黄島、竹島、黒島の三島で構成される島々は、竹が植生の中心となっています。

 

竹島は、海底カルデラである鬼界カルデラの外輪山の一角が、海面の上に顔を出したことによって形成された島です。

 

 

巨大噴火の溶岩の痕跡をのこす鬼界カルデラの外輪山──竹島。

横に長いこの崖がカルデラの内部に相当するそうです。

 

近づいて見ると、この島の緑は、ほとんど竹です。

竹島とともに、鬼界カルデラの外輪山の一角である硫黄島。

 

この島のシンボルである硫黄岳の火口のまわりは、火山性のガス、それにともなう酸性雨によって、植物のみえない岩だらけの景観ですが、火口から離れるにつれ、緑が固まりが見えてきます。

 

下の写真をよく見ていただくと、茶色い岩肌の一部に、硫黄の結晶による黄色いかたまりがあり、そこから出ている白い噴気がわかるとおもいます。

しかし、硫黄岳火山の周辺の緑の大半は、竹です。

竹のほかは、ススキ、そして松。

 

松竹梅のうち、梅のことはよくわかりませんが、松と竹は火山性に土壌に適した植物であるようです。

 

火山列島日本のシンボルとされるにふさわしいといえます。

 

硫黄島には、このような竹の道がどこまでも、つづいています。

 

 

 

 

細身のこの竹は、「大名筍」と呼ばれるタケノコとして商品価値をもっています。

 

細くて非常に柔らかいタケノコで、アクもほとんどなく、サラダにして生でも食べられるという優れものです。

東京の青果市場に出荷され、都内の高級料理店でも提供されているそうです。

 

 

私が硫黄島を訪れたのは十二月で、タケノコの季節ではなかったので、宿泊した民宿で、さすがにタケノコのサラダは出ませんでした。

 

塩漬けされた大名筍の煮物を賞味しただけですが、それでも高い評価の片鱗を感じることができました。

 

三島村では今、火山的な土壌で生育する「大名筍」に、より一層のブランド価値をつけるための取り組みがはじまっています。

 

 

タケノコ仕掛け人 山﨑晋作さんの「離島ブログ」

 

 

九州南部の竹の文化

 

現代工芸のジャンルでは、大分県の竹細工のほうが存在感があるような気もしますが、古代にさかのぼると、鹿児島あたりにいた「隼人」とよばれる異風の人たちの竹の文化は都でも知られた存在でした。

 

竹工芸の歴史にかんする本を開くと必ず書かれていることですが、『延喜式』の第廿八巻に「兵部省 隼人司」という項目があり、「作手隼人」つまり職人仕事をしていた隼人が出ています。

 

この隼人の職人が得意としていたのが、竹細工であったようです。

指宿市立の歴史博物館にあった隼人についてのパネル展示。

こちらは硫黄島でみた竹の風景。

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