日本経済新聞2016年2月7日朝刊読書面コラム「本の小径」で、宮川匡司編集委員に紹介していただきました。
益田勝実の名著『火山列島の思想』の復刊(講談社学術文庫)とあわせて、弊社刊『火山と日本の神話 亡命ロシア人ワノフスキーの古事記論』を取り上げています。
「東日本大地震から5年、度重なる余震や火山の噴火が発生している日本列島は、9世紀以来の大地変動の時代を迎えた、ともいわれている。温泉や美しい景観でマグマの恩恵を多分に受けながら、多くの日本人が、火山噴火の長い歴史をどこまで忘れていた。しかし、火山活動は実は、古くから日本人の精神活動に大きな影響を及ぼしてきた。そのことにいち早く注目した著作が、相次いで刊行されている」
宮川氏のコラムは、このように書き出したうえで、益田勝実の『火山列島の思想』を解説しています。古事記などに登場する出雲神話の神、オオナモチは「大穴持」とも表記されることをとらえ、火口を表象する火山の神だとする説です。
『火山と日本の神話』については、以下のように紹介されています。
「亡命ロシア人、アレクサンドル・ワノフスキーの著書『火山と太陽』(1995年)を復刻し、解説となる研究者へのインタビューや論文、それに評伝なども合わせて収録した。ワノフスキーは古事記に登場する国生みの女神イザナミや、その子スサノオを火山の神とみなし、古事記神話への噴火現象の影響を、克明に読み解いている」
このコラムは「火山列島の神話問う」というタイトルで、「荒ぶる自然との付き合い方を懸命に探った古代人の心情は、「大地変動の時代」への警鐘にも読めてくる」と結ばれています。
古代の日本列島の住民の精神と私たちの精神をリンクするものとしての火山の神話──という宮川氏の道案内に沿って、『火山列島の思想』、そして、『火山と日本の神話』にお目通しいただければありがたいです。「古事記」の神話を、これまでとは違った「目」で楽しんでいただけるはずです。