山陰中央新報の読書面に書評、掲載。

島根県、鳥取県をエリアとする地方紙・山陰中央新報の読書面(2016年3月27日付)に、天野一男・茨城大名誉教授による書評が掲載されました。

 

天野氏は地質学者で、ジオパーク運動の中心メンバーのひとり。『構造地質学』『フィールドジオロジー入門』などの専門書のほか、高校生の「地学」の教科書の執筆にも携わっています。

 

 ワノフスキーはイザナミを「火山の女神」であると考え、古事記にかかれている国産み神話を、火山活動とともに形成された日本列島の地質学的な記憶として読み解いています。地質学者である天野氏は、ワノフスキーの火山神話論を次のように解説しています。

 

「ワノフスキーは、日本列島の地球科学的な特徴に触発され、彼の豊かな感性を発揮し、古事記を題材にして地震火山神話の当時としては奇想天外ともいえる解釈を展開したのである。

 なお、この地球科学的特徴は、1960年代後半に成立した、プレートテクトニクス理論により形成過程が明らかにされた。日本列島はプレートの沈み込む場所にあたるため、火山活動と地震活動が特に活発な地域なのである」

 

火山という日本列島の資質学的特徴に着目したワノフスキーの古事記論『火山と太陽』は発表当時、一部の人たから

絶賛されたものの、学界、読書界からは黙殺されたままでした。百万年、千万年単位の地質学的な時間と古事記神話をむすびつけて考えることは、日本の神話の内実にうといロシア人による妄想であり、トンデモ本的な古事記論であると見られたのかもしれません。

 

しかし、昨今、全国各地のジオパーク運動、NHKの人気テレビ番組「ブラタモリ」で明らかであるように、郷土の地質学的な特徴にたいする関心が高まっています。それとともに、地質学者が神話や伝説について語る機会も増えています。こうした機運を象徴する事例として、大学の研究者の総本山ともいえる日本学術会議の刊行する月刊誌『学術の動向』の2015年10月号があります。「神話世界を地形地質学的視点で語る 新しい文理融合型の地域資源」というタイトルで、出雲神話の世界を地質学的なアプローチで紹介する「くにびきジオパーク」の取り組みが特集されているのです。

 

天野氏の書評は、出雲地方ですすんでいるこのジオパーク計画を紹介したうえで、『火山と日本の神話』について、「私たちが足元の大地をより学際的に捉えるヒントを与えてくれる本として、一読されてはいかがだろう」と結ばれています。